リノベで価値を高めたポータルサイト「素材ラボ」
ウェブサイトの価値を高め、売り上げ・利益の増加につなげるリノベーションを成功させるには、そのサイトの本質的な価値を見つけ、将来の方向性を決めるとともに、リノベーションの設計図を描くことが重要だ。文化社が2017年秋に買収し、運営しているイラスト・ひな型無料のポータルサイト「素材ラボ」の例を紹介したい。
素材ラボの売り情報は日本サイトM&A協会からもたらされた。通販サイトではなく、集客によるアドセンス広告が主な売り上げの情報系サイトだ。立ち上げて2年のサイトだが、システムやコンテンツはしっかりしており、約80人のイラストレーター、約2万8000点の登録イラスト素材に加え、会員が4万人もいた。イラストレーターの投稿で新規ページが毎日数十ページ作られ、ロングテールキーワード検索による集客が確実にできていた。 当時の利益は月20万円程度で、評価額は30カ月分の600万円。しかしシステムの完成度、安定的な集客、文化社の主業務とのシナジー効果の期待などから1000万円と評価した。
リノベーションは素材の質の高さが重要と考え、イラストレーターとウィンウィンの関係を保ち、数多くの作品を投稿してもらい、サイトを盛り上げることを基本方針とした。
一般的に投稿型サイトは、イラストレーターが投稿した時点で著作権がサイト運営側に移る。しかし、そのルールを適用すると、イラストレーターが良質な作品を投稿する際の障害になると考えた。そのため、著作権を作者に残したままでイラストを利用できるように規約などを変更し、トップページには「著作権は投稿者に帰属します」と目立つように表記した。また、投稿時やダウンロード時に付与されるポイントも2倍にした。 この方針変更はイラストレーターに好評だった。また、イラストレーターが多く集まるツイッターに広告を掲載して登録者を増やすことを重視したことで新規登録者は年間90人を数え、質の高い作品が集まるようになった。一般ユーザーには、サイトの知名度を上げることを目指した。手っ取り早く集客できる1円広告を行うためサジェストキーワードを20万ワード集め、常時広告を打って集客に力を注いだ。
これらの施策が功を奏し、1年間の運営で月間のアクセス人数が15万人から4倍の60万人に増え、売り上げも4倍となった。広告費やイラストレーターへの配分を多くしているので利益は3倍程度に抑えられているものの、素材ラボの評価は買収時の3倍になり、リノベーションは成功した。