ウェブサイトの価値の基になる利益を確実に得るには、低コストで運営することが望ましい。
小人数で、知識も必要とせず、アルバイトやパートで運営できるネットショップはリスクが小さく理想的だ。しかし、一般的にみて低い評価しかできないサイトも埋もれた良いところを探し出し、悪い部分を直せるスキルがあれば、高い評価のサイトに作り変えることができる。
例えば、赤字サイトでも次のような場合は高い評価ができ、売却につながるケースが多い。(1)アクセス数が長期にわたって安定している(2)アクティブな会員数が多い(3)成長市場をターゲットにしている(4)明らかに運営方法が悪いため赤字になっている。
(1)と(2)は、多くの人が集まる状態なので販売する商品を見直したり、見せ方を工夫したり、サイト内を回遊するページ作りにすることで黒字転換が可能。(3)は、長期にわたって収支を計算する必要はあるものの、2年後、3年後のアクセス数やそれに伴う売り上げなどを予測して黒字化できれば、将来を見据えて買い手が付く。
(4)は、集客のため過大な広告費をかけて赤字になるケースがある。リスティング(検索連動型)広告で100円以上の単価をかけている場合は、高額商品を扱わないと赤字になるケースが多い。その対処として「1円広告」と言われるロングテールを狙うリスティング広告に変更すれば、集客単価を下げて黒字化できる可能性が高くなる。
このほか戦略的なサイト構築ができていたり、しっかりしたシステムが作られている場合、赤字でも同様のサイトを新たに作る費用と売却価格とを比べて安上がりなら、購入者が現れる。
一方、黒字サイトの場合をみると、「サイトの評価の基本となる金額は月間利益の30カ月分」という一般論からかけ離れた金額で売却された事例がある。古い話になるが、今から16年前の2003年に、楽天は日立造船の子会社で旅行予約サイト「旅の窓口」を運営するマイトリップ・ネットを323億円で買収した。
マイトリップ・ネットの売上高は32億円、経常利益は11億円だった。買収金額を利益で割ると約30年分になる。「旅の窓口」の資産は会員数283万人、登録宿泊施設数1万1673施設といった無形資産がほとんどを占めていた。だが、旅行予約サイトナンバーワンで楽天トラベルの最大の競合先だったことに加え、まだ当時、会員数が400万人程度と発展途上だった楽天市場とのシナジー効果などを考慮して、楽天が高く評価した。
ウェブサイトの価値はこのようにケース・バイ・ケースで、評価が難しい場合もある。逆にそれだからこそ、埋もれた宝の山を発掘することができる。
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